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「皆さんはどうしたんですか?」
沖田が聞いた。
「総ちゃんがいない間にいろいろ変わったのよ」
切ない顔でいうお鈴に何かを感じとり、沖田は軽く頷いた。
「さ!さっさと掃除しな!」
お鈴はまた何事もなかったかのように笑うと二人の背中を押した。
「なんでお一人なんでしょうね?」
美海は雑巾を絞りながら沖田に問いかけた。
「ご主人が…」
沖田は複雑そうな顔で呟いた。
「昔はご主人がいたんです。この若さで寿命を全うしたとは思えない。多分…病に倒れたか殺されたか…」
美海は声にならない叫びを上げた。成立離岸公司 - easyCorp
「別れたってことは…?」
「とてもじゃないですが考えられません」
沖田は廊下を拭きながら答えた。
それに続いて美海も拭き始める。
「そうなんですか…」
なんだかモヤモヤとした雰囲気で床を拭き進めた。
お鈴さんはどんな気持ちで言ったのだろう。
当事者じゃない私にはわからない。
お互いが黙り込む。
屯所の掃除より早く終わりそうだ。
こんなところにもいちいち違いを感じてしまった。
一通り拭き終わった所で沖田が口を開いた。
「ねぇ美海さん」
「はい?」
「もしも、もしも私が死んだらどうします?」
美海は目を見開いた。
「そんなこと、考えたこともありませんよ。逆に沖田さんは私が殺されたらどうするんですか?」
「殺されたらの特定ですか。それなら簡単ですね」
沖田はにっこりと笑った。
「そいつを殺して私も後を追います」
あっさりと答える沖田に美海は恐怖さえ感じた。
私なら、どうするんだろう。
ふと沖田は考え込むと口を開いた。
「まぁ美海さんはそんなことしちゃいけませんよ」
「何でですか?」
美海は首を傾げた。
「美海さんはいいんです」
沖田はヘラッと笑った。
「なん「さ!早く掃除すませましょ!出掛けますよ!」
美海の反論も聞きもせずに沖田は再び雑巾掛けに取りかかった。
なぁんかなぁ…。
上手く話を終わらせられた。
美海も腑に落ちないままだが、時間があるといってもタラタラしてはいられない。
仕方なく雑巾を握った。
その間沖田は愛しそうな哀しそうな目で美海の姿を追っていた。
美海さん。
ごめんなさい。
私も土方さんと同じ考えだ。
私達武士は、男は、守りたいものがある。
それを守り通して死ぬことがかっこいいことだと思ってる。そういうんじゃないんです。
死んでも守らなければならないものがある。
その対象が私達に取ってはあなたなんですよ。
勝手でごめんなさい。
ズルくてごめんなさい。
正直、斬り込み隊長とかなんとか言われてるけど私には自信がない。
肝心なところで自信がない。
だからあなたを守りきれるかわからない。
ごめんなさい。
私はあなたを追って死ぬって言ったけど、あなたからはそんなこと聞きたくない。
自分から聞いたくせにおかしいですね。
あなただけは生きなくてはならない。
もちろん生きて幸せになるに超したことはないんだけど。
「お…終わったぁ…!」
美海は一度熱が入ると作業が早い。
先程の話なんか忘れてしまった。
「お疲れ!さぁ。もう行っていいわよ~!」
ふと女装して(元々女だが)潜入した時のことを思い出した。
あの時よりは大分楽な作業だけど、大変だったなぁ…。
てか山崎さんの女装は完璧すぎて気付かなかったもんなぁ。
美海はジッと沖田を見た。
「?」
うん。できないことはないな。女装。
沖田は美海にまさか女装の妄想をされてるとは思わなかった。
先程のことを気にしているのだろうと思い、美海のことを抱き締めた。
「むぐっ!?」
美海は頭を押さえられていて胸板から顔をずらせない。
どうにも動けなかったため美海は諦めて身を委ねた。
長い間二人は抱き合っていた。
美海はよく分からなかったが、沖田は美海の存在を確かめるように抱き締めていた。
彼女は死なせない。
その温かさが更に沖田の決心を固めた。
誰にも見られていなかったことが幸いだ。
知らない人からすればどう見ても男色に見える。
沖田なんか死ぬまで、いや、死んでもお鈴に馬鹿にされるに違いない。
沖田は気が済んだのかパッと手を離すと
「行きますか」
と笑った。
美海の顔は真っ赤だった。
風が気持ちいいなぁ。
美海はウトウトしだした。
疲れた…。
美海は膝に顔を伏せる。
サァァァァ…
風で美海の茶色い髪が揺れている。
スースー…
ジャリジャリ…
美海が夢の中に入って少し経った頃、境内の砂利を歩く音が聞こえた。
ジャリジャリジャリジャリ…
美海は一向に起きない。成立離岸公司 - easyCorp
ジャリ…
小さく肩を叩かれた。
「美海さーん。起きてくださーい」
「んー―…」
はぁ。これが不逞浪士だったら間違いなく斬られてますよ…。ただでさえ髪の色が茶色いから美海さんって分かるのに。
歩いてきたのは沖田だ。
「無防備すぎですよ」
確かに美海の茶色い頭は正面に向かって丸出しだ。顔は見えないが。
沖田は美海の髪を少し上に上げた。
ピク…
耳元に口を持っていく。
「みっなみさー――ん!」
ガタッ!
「うわぁ!?」
沖田は美海の耳元で大声を上げた。
無論美海は飛び起きる。
「ななななななんですか!?鼓膜破れます!」
美海は心臓がバクバクしているようで胸に手を当てている。
「いやぁ。起きないから」
「あ。私寝てたんですか…。ついつい」
「はぁ。寝るのは結構ですけど屯所で寝てください。襲われますよ?」
いろんな意味で。
「もう目がバッチリ覚めました。ところで…。約束…覚えてますよね?私お腹空きました」
「はぁ。分かってますよ!」
沖田は苦笑いする。
鬼ごっこの結果、美海は二回は捕まったのだが、なんとか逃げ切ったのだ。
約束では沖田が甘味処へ連れて行かなければならない。
美海の性格上人の奢りとなれば容赦ないだろう。
財布が危機だなぁ…。
今月生き抜けるでしょうか…。
「いー――っぱい聞きたいことがありますんで甘味処で話してもらいましょうか。宗次郎さん?」
美海はにっこりととびきりの笑顔で言った。
怖いなぁ…。
沖田は憂鬱そうな顔をする。
「よぉし!行こう!」
美海は沖田の手を引っ張り境内を出た。
ガラッ
「いらっしゃーい!あら!立花さん一人?」
甘味処から元気な声が聞こえる。
にっこりと美海は笑う。
「あら!沖田さん!後ろにいたの。相変わらず仲良いわねぇ。さ。座って座って!」
ここは沖田の行き着けの甘味処だ。美海と二人でよく行く。
「何頼む?」
先ほどの店員が注文を受けにきた。
沖田はおどおどと仔犬のような目で美海を見ている。
「じゃあ…とりあえずお萩二個とお汁粉二つとあんみつ4つとお団子10本で!」
「はいよ!ちょっと待っててね!」
沖田が予想していたより少なかったため内心ホッとしている。
普段沖田はこれの倍以上は食べるからだ。
「で。宗次郎ってなんですか?あだ名?」
「宗次郎は私の幼名ですよ」
「幼名?ふーん。なんで幼名で呼ばれてるんですか?」
「あの子達は親に沖田総司…というより新撰組は人斬りだと教えられてるからですよ。子供と言えど、沖田総司の名ぐらい知ってます」
「ふんふん」
美海はいつの間にか来た団子を食べている。
「子供達は沖田総司と聞くと怖がるからですよ。殺されるって。
美海さんも同じことです。あの子達の親がそう教えてるからなんですよ。あまり悪く思わないでやってください」
沖田は苦笑している。
「怖がられるなら遊ばなかったらいいじゃないですか」
美海は少しむっとしている。
「あの子達の親は働いているのであまり相手にしてもらえません。
私達が本気で相手をしてあげないと子供達はグレて不逞浪士になっちゃうかもしれませんよ」
沖田はおどけてみせる。
「ふーん。人が良いんだから」
「でも私だけならまだしも美海さんや新撰組を悪く言われるのは嫌ですね…。新撰組は人斬り集団なんかじゃないのに…」
私は斬り込み隊長ですけど。
沖田は少し切ない顔をしている。
統一によって、ようやくその願いが叶うのだと 』
しかし信長は言った。
《 儂が目指す天下は広大じゃ。朝鮮や明、海の彼方にある “ 世界 ” をべることこそ、儂が求めるまことの天下統一じゃ 》
と。
希望を打ち砕かれた思いだった。
これ以上 戦を続けることに何の意味があるのか?
信長の私欲の為に、我々が粉骨砕身し続けねばならないのか?
信長も今や五十を間近にし、自らへ出て、太刀を振るうことも少なくなってきている。
彼の実力は確かだが、世界へ出て苦労を強いられるのは、臣下たちであることは目に見えていた。
『 戦が続けば、それも異国が相手となれば、戦勝を掴むまでに途方もない時を要する事になるであろう。
それもあの上様のこと、一国が手に入れば、また別の一国を求められよう。…切りがない、切りが… 』
だが光秀の最大の懸念は、戦が続くことで、自身の親族や、広く言えば日の本の民たちに火の粉が及ぶことだった。
武者修行に出ていた若い頃から、戦によって家族を亡くし、家を焼かれ、路頭に迷う民たちを大勢見てきた。
この哀れな人たちを救う為にはどうしたら良いのか…?
当代一の武将に仕え、一日も早くこの戦乱の世を終わらせる以外にないではないか。
そういう意味では、光秀にとって織田信長は最高の主君であった。で破天荒、短気で気難しい、実に厄介な人物であったが、
信長には己が目標に定めたことを、必ず実現させる神憑り的な力があった。
事実、信長が目指す日本平定はもう間近である。
それさえ叶えば戦乱の世は終わる。
そう、信じて疑わなかったというのに…。
『 終わらない。あのお方が考えを改めて……いや、生きておられる限り、戦の世は続く… 』
『 駄目だ、それでは! 何としても上様をおめせねば。我が家族の為、民たちの為、
何より上様ご自身の為に。あのお方を正しい道へ引き戻して差し上げねばなるまいッ 』
「これは謀反にあらず。の愚行をお止めせんが為の忠義……命懸けの忠義なのじゃ」
心の声はいつしか言葉となって、広い室内に重々しく響いていた。
これは裏切りではなく、忠心から来る正義の所業──。
光秀は何度も何度もそう自分に言い聞かせていた。
そうでないと、根の優しさが、いとも簡単に決意をひっくり返してしまいそうだった。
無論、“ める ” にしても選択肢は色々とあった。
信長と話し合い、日本国の平定だけに留まってくれるよう願することも考えた。
織田家重臣としての立場を捨て、信長の元を去ることも思案した。
信長を追いつめ、命を取らぬ代わりに、異国との戦を思いまるよう取引きすることも…。
だが、あの信長が自分の懇願を聞き入れてくれるとは到底思えない。
かと言って、ここで織田家を去っては、自分に仕える家臣やその家族のことを考えると、とても踏み切れなかった。
信長を追いつめる案にしても、結局は主君を攻めた謀反人として捕らえられ、極刑に処されるのは必定である。
『 今はまだ死ぬ訳にはいかない。せめて、乱戦の世が終わるのを見届けるまでは 』
ならば、残された選択肢は一つしかない。
───主君・織田信長を、京にてち取る
それが、最終的に下した光秀の決断であった。
幼い頃の濃姫は、母よりも若く、匂い立つような色香を漂わせるこの手弱女(たおやめ)たちの存在が不思議でならなかったが
「貴いお方ならば、二、三人のお側女(そばめ)を持たれるのは当たり前の事にございます。持たれない方がお珍しいのですよ」
と、半ば教育的に乳母からそう聞かせられた時は、“当たり前”という言葉を素直に受け入れたものだったが、
時を経て、自分が妻の立場になってみると、受け入れるどころか話を聞くだけで胸が詰った。
これも信長への深い愛情故なのか。成立離岸公司 - easyCorp
または、自分が思い描いていた将来の理想図に、この第二夫人たちの存在がなかったからなのか…。
濃姫は、信友の主君殺しの話から何転もして飛び出したこの仮話に、徒ならぬ懸念を抱いているのだった。
救いを求め、湯帷子のままで那古屋城へ逃げて来た義統の嫡男・義銀は、その後信長より二百人扶持を献上され、津島神社に居を与えられた。
また、義統にはもう一人子息がいたが、こちらは毛利十郎によって保護され、無事に那古野へと送り届けられたという。
そして同月十八日。
清洲を攻めるべく、信長から家臣たちに出陣命令が下った。
柴田勝家を筆頭に、安孫子右京亮、藤江九蔵、木村重章、そして歴史書としても評価の高い「信長公記」の著者・太田牛一など足軽衆が参陣。
迎え来る清洲勢と初め山王口で、次いで安食村で戦闘を繰り広げたのである。
そんな頃 末森城の信勝は、数名の家臣たちを背後に従えて、玄関口へと続く城内の大廊下を足早に進んでいた。
信勝も家臣らも何とも凛々しい武装姿に身を固め、ひたと前だけを見据えて歩いて行く。
するとその前方から
「…これは母上」
眉間に青筋を立てた報春院(土田御前)が、お付きの侍女たちと共につかつかと歩み寄って来た。
信勝がはっとなって足を止めると
「信勝殿──。かような時分に、それも左様な身形を致して、いったいどちらへ参られまする?」
報春院は焦りの浮かぶ息子の面差しを、見咎めるように眺めた。
「那古屋の城へ参りまする」
「那古屋……信長殿のもとへ?」
露骨に不機嫌そうな顔をする報春院の前で、信勝は静かに頷いた。
「既に母上もお聞き及びの通り、此度清洲は主君である斯波様を急襲し、その縁者諸とも自害に追い込んだのでございます。
いくら同じ織田一族とは申せ、家名に泥を塗った者を…、ましてや主君殺しに及んだ者共を許す訳には参りませぬ」
親族に対しては情厚き信勝であったが、此度の暴挙は人倫に悖(もと)ること甚だしい限りと、いつになく憤慨していた。
「故に、わたしも兄上の元へ参り、何か事あらばお力になりたいと思い及んだ次第。これより早速に参上致し……」
「戯けたことを申されますな!」
信勝の顔面に、母の怒りの眼光が飛んだ。
《 某も武士の身にございますれば、務めの上で馬は必要不可欠。いくら信長様の仰せでも、我が愛馬をそう易々とお譲りする訳には参りませぬ 》
「…と、生意気にも儂の所望を断わりおってのう」
「──」
「五郎右衛門を説得し、あの駿馬を儂に差し出すのであれば、詫び入れの件、考えてやっても良いぞ」
「さ、されどあの馬は、倅がそれこそ宝のように大切にしております故、手離すかどうかは……」
「必ず儂に差し出すのじゃ。良いな」https://www.easycorp.com.hk/zh/offshore
信長は言い銜(くぐ)めるように告げると、パンッと膝を叩いて立ち上がり、上段横の戸襖からそそくさと出ていった。
一人残された政秀は、四半刻前の濃姫と同じような心持ちで、目の前の冷たい床板を茫然と眺めているのだった。
その夜──。
織田彦五郎信友のおわす清洲城の一室には、じりじりと緊迫した空気がみなぎっていた。
上座の檀にふてぶてしい程の威厳を放ちながら端座する信友の前に、林秀貞・通具の兄弟他、
柴田権六ら信勝を支持する家臣たちが密かに集まり、何やら穏やかならざる雰囲気を醸し出していた。
そんな彼らを、家老の坂井大膳(だいぜん)、河尻与一、織田三位(さんみ)ら信友の重臣たちが、一歩引いた所から淡々とした表情で眺めている。
「ほぉ…、では美濃の姫御前をこちら側へ引き入れる策は失敗に終わったのじゃな?」
「まことに面目次第もございませぬ」
「報春院様がご説得に当たられたのですが、お方様は殿への忠節の念を示され、断固としてお聞き入れになられなかったのです」
秀貞と通具が無念そうに告げると、信友は皮肉がかった冷笑を漏らした。
「あの姫御前を通して美濃の蝮の威勢を借りる算段であったが、まさかあの不作法者の肩を持つとはのう。
うつけの嫁はやはりうつけ。己が何をするべきか何も分かっていないと見える」
「いえ──。大方これも美濃側の策略なのでしょう」
「どういう意味じゃ?大膳」
「ようお考え下さいませ。尋常なおなごが、何の企みもなくあの信長殿の肩を持つ訳がございませぬ」
「如何にも」
間髪を容れぬ信友の同調に、重臣たちの間から小さな笑いが起こった。
「同盟を結んだとはいえ、美濃は油断ならざる忌敵。隙あらば尾張を掌中に収めんと虎視眈々と狙うているのです。
それ故、英邁な信勝様が家督を継がれたのでは、尾張一円を奪うのも困難になると危惧なされたのでしょう」
「確かに、うつけの信長が家督を継いだ方が、尾張攻略を目論む美濃にとっては何かと都合が良かろうのう」
「織田家の嫁になったと言うても、所詮は蝮殿が寄越した美濃の諜者にございます。
信長殿に跡目を継がせた後、隙を見て美濃の軍勢を尾張へ攻め込ませる算段なのでしょう」
「なるほど。それ故に信勝殿ではなく、あえてうつけの信長に肩入れを……。さすがは蝮の娘、強かなおなごじゃ」
「信勝様擁立の策を事なく進める為には、姫君がこちら側に付かなかった事は、寧ろ好都合だったやもしれませぬ」
大膳の言葉を聞き、一同は最もだと言わんばかりに頷いた。
「して、今後は如何する? このまま信長が弾正忠家の当主の座におさまるのを黙って見ているつもりか?」